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Column de saison

サン=ジェルマン・デ・プレのカフェ Les Deux Magots et Le Bonaparte

4月に入ると暖かくなり、晴れる日も多くなってきます。人々は陽気にさそわれてカフェのテラスに集まってきます。以前、カフェ・ド・フロールを取り上げましたが、フロールの隣にあって、フロールとともにパリの人々やパリを訪れる観光客に愛され続けるカフェ、ドゥ・マゴ Les Deux Magots を忘れてはいけません。

 

カフェ・ド・フロールもサルトルやボーヴォワールを始めとする哲学者や芸術家が集ったことは有名ですが、1885年に誕生したドゥ・マゴも彼らの溜まり場でした。ここで古くはヴェルレーヌ、ランボー、マラルメに始まり、ボリス・ヴィアンやアルベール・カミュ、ジェームス・ジョイスやベルトール・ブレヒトやシュテファン・ツヴァイク、ピカソやヘミングウェイといった小説家や芸術家たちがサン=ジェルマン・デ・プレ神話を形成してゆきます。

 

サン=ジェルマン・デ・プレ教会に面したテラスの籐製の椅子に腰を下ろしてくつろいでみましょう。道行く人やカフェの常連さんたち、6世紀にさかのぼるサン=ジェルマン・デ・プレ教会を眺めているだけで飽きることはありません。また、おしゃれなブティックが集まるレンヌ通り周辺でお買い物をしてから、ドゥ・マゴで一息つくのもオススメです。またサロンの中でお茶を頂くときは、このカフェに入ってすぐの天井のあたりに鎮座する「二つの陶製人形 = les deux magots」(中国の高官を模している)にもぜひ目を向けてみてください。1885年カフェになる前に絹織物を扱うお店だったころの名残です。

 

パリに住んでいたとき、よくドゥ・マゴでカフェ・オ・レ café crème を飲みました。コーヒーと温かいミルクの入ったピッチャーが別々に出てきます。ふたつのピッチャーを両手で持ってカップに注ぎ、その場で混ぜ合わせます。量もたっぷり飲めるし、コーヒーも美味しく、特別な豆を使っていると聞いたことがあります。

 

ところでドゥ・マゴのテラスからサン=ジェルマン・デ・プレ教会の奥の方、セーヌ川の方向を見ると、赤と青の縞模様のひさしが目に入ります。それがル・ボナパルト Le Bonaparte です。こちらも創業100年以上の老舗カフェで、かつては国立美術学校 Ecole des beaux Arts の学生たちで賑わっていたそうです。

 

2011年5月にボナパルトがリニューアル・オープンした際にエレベーターが新しく設置されました。パリの多くのカフェでは地下にトイレがあり(カフェ・ド・フロールは2階)、狭い螺旋階段を降りていく構造が多いのですが、バリア・フリーの観点からは好ましくありません。実際パリの駅などでエレベーターがある場所はいまだに少ないようで、ベビーカーに乗った赤ちゃん連れ、車椅子の方やお年寄りには意外と優しくない街かもしれません。

 

その点、カフェ・ボナパルトのエレベーターは画期的です。木とガラスで作られた高級ホテルのような仕様のエレベーターで地下の大きなトイレに降りると、ナポレオンがあなたを迎えてくれますよ!

 

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Par BKP (Travail personnel) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

le 15 avril 2015
cyberbloom

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