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Column de saison

ミシュランと食べログ(1)

ミシュラン社はミシュランマンのキャラクターで有名なフランスのタイヤメーカーです。パリ万博が行われた1900年、自動車運転者向けのガイドブックとしてフランスで発行されたのが、ミシュラン・ガイドの始まりです。ミシュラン社はガイドブックの発行で自動車旅行の機会が増え、タイヤが売れることを目論んでいたのでした。

今はミシュランガイドと言えば、レストランの評価が星の数で表わされている赤色の装丁のギッド・ルージュ(le Guide Rouge)を真っ先に想起しますが、2007年11月に欧米以外の初めて都市を対象にした「東京2008」が登場。2010年版からは「京都・大阪」版が出ました。さらに神戸、奈良が加わり、2014年版から『ミシュランガイド関西』に題名が変更されました。

また、星はつきませんが、5000円以下の予算でコストパフォーマンスの高い食事ができる「ビブグルマンBib Gourmand」のカテゴリーが1997年に創設されました。『東京2015』の「ビブグルマン」にはラーメン店が加えられ、話題を呼びましたが、欧米人にラーメンの良し悪しを判断できるのかと言う疑念も

ミシュラン東京版が出版されたのは、東京が世界レベルのグルメ都市である証しでもあるのですが、ミシュランの欧米での影響力が弱まり、新しいマーケットを求めた戦略だと言われています。フランスでもミシュラン離れが起こっていて、その急先鋒として公然とミシュラン批判を繰り広げたのがジョエル・ロブションでした。「わたしはミシュランのアンケートに答えない。載せてもらおうとは思わない。判定基準があまりに時代遅れで、新しさを求めるレストランは評価してもらえない」と主張していました。

ロブションは前菜、メイン、デザートという伝統的なスタイルにとらわれない、カジュアルなカウンターのレストラン「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」を2003年 にパリと六本木ヒルズに開きました。こういうレストランはミシュランに評価されないと発言していましたが、それでも「ミシュラン・ガイド東京」では星を2つ獲得しました(ロブションは2013年現在で世界11カ国に店舗を持ち、ミシュランガイドで総数28個の星を獲得しています)。

一握りの特権者が価値を決め、「これに従え」とばかりに上意下達で情報を流す。大多数の人間はそれを正しい価値として信じる。この啓蒙的な刷り込みを「権威システム」と呼ぶとすれば、新聞、雑誌、テレビなど、近年凋落が著しいと言われるメディアはすべてこのシステムの上に乗っていて、これらは「集合知」という新しい情報様式にその基盤を揺るがされています。ミシュランもまたフランスという最高峰の食文化を持つ国の権威をバックにつけて、上から目線な格付けをやってきたわけですが、これもまた「食べログ」という口コミ情報を評価する集合知的なサイトにお株を奪われつつあります。(続く…)

le 10 janvier 2014
cyberbloom

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