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Column de saison

ミッテラン元大統領の ’Et alors ?’

少し前、政治家の不倫が連日ワイドショーをにぎわせていましたが、特に女性政治家に対するバッシングはすさまじく、次の選挙戦で候補者たちが「不倫は絶対にしません!絶対に許しません!」と叫ばざるをえないような勢いでした。

 

このような光景を目にすると、いつもミッテラン元大統領の ’Et alors ?’ 発言を思い出します。愛人の存在について記者から質問をされたとき「エ・アロール(それがどうした?)」と答え、記者は何も言えなくなったのでした。彼が亡くなって20年経った去年、公然の愛人だったアンヌ・パンジョが、1962年から1995年9月までのあいだに受け取ったラブレター1218通をまとめた『アンヌへの手紙』(ガリマール社、写真↓)を出版しました。49歳のミッテランが恋に落ちたとき、アンヌはまだ19歳でした。

 

またミッテラン大統領はさらに何十人もの愛人がいて、亡くなったあと、彼が葬儀における愛人たちの席順を決めていたことが報じられ、さらに人気が急上昇したと言います。まるでもてない男が嫉妬に駆られるように不倫問題を叩く日本とは逆に、むしろ女性にもてて女性を幸せにする甲斐性のある男が支持され、大統領になる国がフランスです。また フランス人が不倫に寛容なのは自他のプライバシーを尊重する国民性だからというよりも、自身の恋愛に忙しく(他人の不倫に目くじらを立てている暇はない)、それだからこそ、自分もまた叩けば埃の出る身であり、お互いさまと言うことなのでしょう。

 

ヨーロッパで言う市民道徳はパブリックな場における道徳で、個人のプライベートに介入するものではありません。不倫に対して良い感情は持たないにしても、それが市民道徳に反するとは言ませんし、基本的に政治倫理や政治家としての資質とは無関係です。日本のように民主的に選ばれた議員が不倫問題で辞めさせられるのはフランスではまさに「公私混同」で、ありえないことなのです。

 

le 10 octobre 2017
cyberbloom

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