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Column de saison

シードル街道 La route du cidre

リンゴがスーパーにも出回るようになってきました。日本でリンゴと言えば青森県ですが、フランスではノルマンディ地方が想起されます。ブドウの栽培に適さないノルマンディでは、ワインの代わりに、リンゴの発泡酒、シードル(サイダーの語源にもなっています)が生産されています。さらにシードルの蒸留酒であるカルヴァドスも有名です。よくリンゴがまるごと入ったカルヴァドスのボトルを目にしますね。地理的に言えば、パリの西方向に位置し、最近お会いしたノルマンディの観光局長さんが自虐的におっしゃっていましたが、「パリからモンサンミシェルに行くときに、バスがしばしばトイレ休憩で停まる場所」です。

ノルマンディーには印象派の絵で知られるオンフルール Honfleur、大きな教会のあるリジュー Lisieux、競馬やアメリカ映画祭で知られるドーヴィル Deauville、文豪マルセル・プルーストが滞在したカブール Cabourg など、有名な町が多いですが、カーンとリジューのあいだの20のカーブを結んだ40キロの道は「シードル街道」と呼ばれています。シードル街道が生まれたのは1974年のことですが、今や、街道の周辺にはレストランや宿泊施設が立ち並び、10月にはリンゴの収穫祭が行われ、地域に経済効果をもたらしています。またシードル街道には、ブーヴロン Beuvron en Auge という花に包まれた可愛い町があり、「フランスの最も美しい村」にも指定され、密かな人気を集めています。

pommiers

みなさんはリンゴの木 pommier の花をご覧になったことがあるでしょうか。リンゴの木は5月になると白い花をつけ、ちょうど日本の桜のように一斉に満開になり、ノルマンディの美しい風景を演出します。ノルマンディはカマンベールチーズでも有名ですが、カマンベールにもシードルがよく合います。またウォッシュタイプのリヴァロというチーズには、カルヴァドスが最高のマリアージュになるそうです。

シードルは田舎の飲み物というのがイメージが強く、もともと自家用に造られていました。つまり売ることを考えずに、樽から直接ピッチャーに注いで食卓で飲んでいたのです。戦後になってビン詰めを始めましたが、上手く発酵させないとビンが破裂するので、安定してビン詰めにする技術を開発する必要がありました。シードル生産者の努力と宣伝によって、フランスでは最近シードルを嗜む人が増えています。シードルはアルコール度が低いので運転する人に好まれ、ワイン一杯に対して三杯飲めるというのがうたい文句のようです。フランスではワインを中心にアルコール離れが著しく、ミネラルウォーターやノンアルコール飲料にシフトしているようですが、そのあいだにシードルが入り込む余地があると期待されており、実際にシードル人口は着実に増えています。ぜひこの機会にシードルを味わってみてください!できればカマンベールと一緒に。そしていつかシードル街道にも。(写真はノルマンディのカンブルメールの観光局長のクリスチャン・ボサールさんから提供いただきました。満開のリンゴの木とシードルのカーヴの写真です)

cidrecave

le 30 septembre 2015
cyberbloom

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