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フランスのレストランが高いのはなぜ?

今年出た注目のフランス本に藤野敦子著『不思議フランス』があります。藤野さんは経済学者で、データを交えながら説得力のあるフランス論を展開していますが、フランス料理に言及した部分も面白いので、紹介してみたいと思います。

不思議フランス 魅惑の謎日本ではレストランで1000円もだせば美味しいものが食べられます(ロバボンのランチもそうですね)。日本のレストランの価格競争の厳しさを垣間見るようですが、フランスではレストランで食べるとそれなりに高くつきます。ビストロやブラッスリーで食べてもそこそこかかります。満足するものを食べたい場合は、昼なら20ユーロ、夜なら50ユーロは必要でしょう。

フランス料理はなぜ高いかというと、高く設定する必要があるからです。フランスの料理の起源は宮廷料理であり、高級な食材を使い、手間ひまもかかっています。逆に安くすると価値が下がってしまいます。フランスはブランド=付加価値を売る国です。消費者は安いものを求める一方で、商品の価格が高いほど満足度が高まることも知っています。それを「ヴェブレン効果」と言うそうです。私たちはルイ・ヴィトンやエルメスのバッグは高いから買うのです。

フランス人は誕生日など、特別なとき以外は高級レストランで食事をしません。フランスでは友だちと食事をするとき、ホームパーティが一般的です。また普段の食事はとても質素です。先日、フランスの「ピカール」という冷凍食品ブランドが日本に上陸したことが話題になっていましたが、冷凍食品も頻繁に食卓にのぼります。女性が働くようになったことや冷凍食品の質が上がったことなど、いろんな理由がありますが、昔に比べるとフランス人は料理に手間暇をかけなくなったようです。しかし、食事に時間をかけ、楽しむことは忘れていません。

LMVH(ルイ・ヴィトン・グループ)の売り上げの88%がアジアやアメリカなどの海外での売り上げで、12%の国内の売り上げも外国人観光客によるそうです。フランスのラグジャリー部門は、一部の富裕層を除き、最初からフランス人を相手にしていないのです。フランス料理も同じことが言えます。

フランスは外国人観光客が世界一多い国で、自国の人口を大きく上回る8000万人以上の外国人観光客が毎年訪れます。彼らが一生に一度の思い出としてフランス料理を食べに来るのです。一定数のお客を計算できるので、値段を下げる必要もないのです。初めてのフランス旅行で財布の紐がゆるくなっているところに、タイミングよくデザートや飲み物をすすめ、ラディシオン( l’addition : お勘定のことです、食べたものの値段を足したもの)をふくらませていくのです。

2010年にフランスの美食術( gastronomie )がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。それにはちゃんとした形式上の定義があります。まずアペリティフで始まり、前菜、魚料理+肉料理(どちらか1皿でも)、チーズ、デザート、最後はディジェスティフで終わります。そのような洗練された形式だけでなく、美食術が、単なる飲み食いにとどまらず、人々の交流の場を作っていることが世界遺産に選ばれた理由です。ロバボンもこのコンセプトに倣っています。

le 20 novembre 2014
cyberbloom
 

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